終活 家族信託
終活 家族信託
あなたが認知症や脳血管疾患になってしまったら、あなた自身はもちろんのこと、家族であっても定期預金の解約はできなくなります。不動産の売却もできなくなります。これが資産の凍結です。
そこでこれを事前に回避するのが家族信託という手法です。あなたに代わってあなたの家族があなたの財産を法的に管理できる仕組みのことです。
家族信託という言葉、テレビや雑誌で取り上げられていますが、「よくわからない」というのが正直なところではないでしょうか。何故でしょう?それは信託という言葉が使われているからです。給与振り込みのできない信託銀行のイメージが強く、自分には関係ないと思ってしまうからです。
では、信託って何でしょう。信託とは、信用して託すこと。財産を預かり、預かった方がそれを管理、運用、処分する仕組みです。信託銀行がそれにあたります。では、預かって管理する側が信託銀行ではなく、あなたの家族であればどうでしょう。
例えば、マイホームと預貯金合わせて1000万円持っていたとします。ところがあなたが認知症になってしまったら、定期預金は下ろせなくなり、不動産は売れなくなってしまいます。あなたが病院に入院したり、施設に入所したりするお金は自分のお金から出そうと思っていても、あなたは自分の入院費や施設入所費を、自分のお金から金策できなくなり、自分の息子、娘から代わりに払ってもらうことになったらどうでしょう。
家族信託契約を締結していれば、もしご不幸にもあなたに何かあったとしても、あなたの財産が使えなくなるようなことにはなりません。あなたのご家族が、あなたに代わって財産管理を行うことができるからです。つまり、資産凍結にならないのです。
意思判断能力が失われるとどうなる?
認知症が問題となるのは、意思判断能力が失われて、法律行為が認められなくなったときです。
意思判断能力が失われると、金融機関では定期預金の解約はできず、不動産の売買はできなくなります。お金を持っているにもかかわらず、それを使えない、不動産を持っているにもかかわらずそれを売れない、という状態です。
こういう状態になってしまうと、資産の凍結を解除するには法定後見制度を利用するしかないのです。
成年後見制度を利用すると
成年後見制度とは、家庭裁判所によって選任された後見人が、認知症などで判断能力の不十分な方の財産を保護する制度です。聞こえはよいのですが、後見人は本人の財産をしっかり守る(減らさない)という職務を負うことから、家庭裁判所の強い権限で管理されています。
したがって、本人にとって本当に意味のある、合理的な理由のある支出しか認められず、柔軟な財産管理は難しく、家族のための支出や、将来のための相続対策はほぼできません。また、たとえ本人のためであったとしても、積極的な投資や運用も実行できません。
あくまでも「財産を減らさない」ことが目的ですから。
つまり、「財産の塩漬け状態」になってしまうのです。
さて、そうは言っても、これまでは、成年後見制度を使うしかなかったのです。いわゆる「制度の限界」です。
成年後見人をつけた方は、「つけなければよかった」と、後悔する人が数多く出ています。
この制度の限界も、2007年9月の信託法の改正により、今の家族信託の実現が可能になり、選択肢が増えました。
家族信託の仕組み
一見難しそうに見える家族信託ですが、全体像を理解してしまえば、家族に財産を託すことがさほど難しいものではないことがわかります。
家族信託の登場人物は、委託者・受託者・受益者の三人。
委託者=財産の所有者でその財産を託す人
受託者=財産を託され、管理・運営・処分する人
受益者=財産の運用・処分で利益を得る権利(受益権)を有する人
家族信託は、基本、委託者=受益者となります。
受益者を別の人物にすることも可能ですが、その方法は数多くないのでここでは説明を省きます。
委託者=受託者であるならば、財産の所有者は委託者のままであり、受託者に財産が移動したわけではないのです。